〔杏里Side〕



"優斗さん、だいすきです"



この言葉を発して、暫し沈黙が走る。



この世界には、もう誰もいないんじゃないかって錯覚するくらい、静か。




そんな中で、あたしの心臓は激しく動いていて。



冷静になって考えてみれば、あたしは結構大胆な行動をしているわけで。



お互い、中々声を出さない。



と、そのとき。



ガサッ……



ちょっとの振動で、あたしの上げた袋が、音を立てた。



そして、それを合図かのように、優斗さんはこちらに振り返った。



真剣で、強い光を宿った瞳に、ドキッとする。



そして、ゆっくりと顔が近付く。



それに従うかのように、あたしも目を閉じた。




……が、何も起こらない。



不思議に思って目を開けると、切なそうな優斗さんがいた。



ゆっくりあたしから離れると、頭を掻き、珍しく落ち着きがない。




なんで?



なんで、何もしてくれないの?



むしろイライラしているように見える優斗さんに、なんだか悲しくなって。



あたし、魅力ないのかな?



再び、不安を覚えた。



やっと、優斗さんとなら、大丈夫って、思えたのに。