[完]大人の恋の始め方






「…いつから、ですか?」



気づけば、そんな事を呟いていた。



あ、と口を押さえるときには、もう遅くて。



俯いていると、急に頭を撫でられた。




え?と顔を上げると、それは ありすちゃんで。




「不安にさせてごめんね?

ありすと優斗は、中学生の頃から一緒なの。


てゆーか、ありすが追い掛けてたんだけどね?」




えへ、と笑うありすちゃん。


だけど、その笑みは、どこか悲しい。



「中学生の頃から…」



あたしより、ずっと大好きなんだ…。



「あ!
でもホントに、もう諦め着いたから!!」



慌ててありすちゃんが、あたしを説得する。




「ありすちゃん…」




「あ~もう!
そんな顔しないのっ」



ありすちゃんは、あたしの頬をぐりぐりとする。




「ありがとう…」



ほんとだったら、あたしのこと憎いはずなのに。



優しい彼女は、決してそんな表情を見せない。



「杏里、ちょっと部屋行ってろ」


優斗さんは、あたしの頭をぐりぐりと撫で、あたしを部屋に入れた。



多分、これ以上、あたしが辛くならないように、だと思う。



二人に気を使わせてしまうあたしは、とても自分が哀れに思えた。