[完]大人の恋の始め方





にやっと優斗さんが笑う。



そんな優斗を見て、ありすちゃんはクスリと笑う。



「そっかー。ありすじゃダメなんだね?」




あーあと、残念そうなありすちゃんの理由が、あたしには分からない。



どういうこと?


あたしは、優斗さんを見つめる。



すると、ありすちゃんが、そんなあたしの手を引いた。



「ありす、優斗が好きなの!」




悪気もない笑顔が、あたしの視界に広がる。



「…あの、?」



優斗さんを好き?



「まぁ、たった今、完全にフラれたけどねー」



「今じゃなくて、4月頃に断ったはずだけど?」



優斗さんは、あたしを引っ張り、膝に乗せる。



「なによー。仕方ないじゃん!
中学の頃から好きなんだから」



ぷくーっと頬を膨らませる、ありすちゃんは凄く可愛くて。



あたしなんかより、優斗さんにお似合いで。



「中学のころからなら、そろそろ諦めつくだろ」



はー、とため息をつく優斗さん。



…違うよ。
きっとありすちゃんは、思いが長いから、忘れられないの。


凄く一途なんだよ…。



そう思うけど、それを口に出来ないあたしは、ことごとく弱い。



ありすちゃんを、これ以上プラス評価したくない。



あたしはズルイ。



「んもー、鈍い奴。
優斗って、昔からそうやって女の子傷付けるよねー」



やれやれとする、ありすちゃん。




その親しげな姿にもやもや。