入った瞬間、目に映るのはソファーに座って、テレビを見ている優斗さん。
あたしは、その後ろ姿に近付く。
「杏里、おせぇ―…」
「えっ?」
ソファーの背もたれにひじを掛けて振り返る。
「俺に昨日着替えまでさせて、俺より後に起きてくるとはな?」
やっぱり、優斗さんが着せてくれたんだ……
って、違うッッ!!!!
この人だれ!?
完全に話し方がおかしいんだけどっ!!!
「あの…優斗さん…きゃあっ!!!」
急に優斗さんは、あたしの腕を掴み引き寄せた。
急な事でよろめき、押さえられた後頭部のせいで、優斗さんの肩に顔が入った。
「悪いけど、こっちが本当の俺。覚悟しろって言ったよな?」
確かに、昨日言われたような―…
てか、近いんですけど!!!
優斗さんからは、桃の香りがして、頭がクラクラする。
すると、いきなり優斗さんの指が耳に触れた。
身体がピクンッと跳ねる。
「お前、ほんと耳弱いな?」
わざと、耳元で吐息が掛かるように話す優斗さん。
そのあと、耳を甘噛みされ、思わず優斗さんから離れた。
だけど、力が入らなくて、倒れそうになるのを、優斗さんがあたしの腰と腕を掴んで助けてくれた。