急に、声が聞こえて
男が一人倒れた。
そして、さらにもう一人も蹴り飛ばす。
……夢じゃない…よね?
溢れる涙を必死に拭っていると、彼はぎゅっと、優しく抱きしめてくれた。
この温もり。
この力。
この匂い。
全てにおいて、あたしはこの人しか、受け入れられない。
あたしを安心させてくれる、唯一のヒト。
「っ…優斗さっ…!!!」
確認をするように、名前を呼びながら、彼の背中に手を回した。
それに応えるように、更に力強く、優斗さんは抱きしめてくれる。
それにすがるようにしていると、彼がそっとあたしを、起き上がらせる。
そして互いに向かい合うと、触れるだけのキスを
"ちゅっ"
とした。
なんでだろう…?
なんでこんなにも安心するの?
さっきまで、恐怖と嫌悪から硬直していた身体は、今は温かく自由に動かせるようになっている。
「平気か?」
まだ涙目で俯いているあたしに、確認する優しい言葉。
胸が、ぎゅっと苦しいのに、温かい。
彼に近付きたくて、仕方ない。
………優斗さんにしか、
あたしは…………。

