[完]大人の恋の始め方





反論しようとした、その時。



あたしと優斗さんの間に、コーヒーが割り込まれた。



「いけませんねぇ?話はじっくり聞くものだ」



楽さんが、あたしにニコリと微笑む。



あ・・・。
楽さん、チャンスをくれてるんだ。



あたしが不安になったこと、話したから。



「俺に何か言いたいのか?」



眉を潜めて尋ねる優斗さんに、楽さんは肩を竦めた。



「無いように見えるか?ちゃんと杏里ちゃんを見てやれよ」




楽さん・・・。



嬉しかった。
楽さんがあたしを気遣ってくれたことも、冷静に対処してくれたことも。



楽さんが、せっかくチャンスを作ってくれた。



なら、あたしはしっかり話さなきゃイケナイ。



あたしは深呼吸を一度して、真っ直ぐ優斗さんを見つめた。



「ほんとはね、すごく不安だったの」



「不安?」



「うん。ほんとは優斗さんは、過去のことをあたしに知られたくなかったんじゃないかって。

ウザったいって思ったんじゃないかって。


それに、過去のこと聞いて、あたしより、奈緒さんのことの方が好きだったんじゃないかって。



いろんな不安があったの。
だからあの時、優斗さんのため息で絶えらんなくなって・・・

本当にごめんね?」