[完]大人の恋の始め方





「あぁ。でも、そうあっさりと明け渡したくはないな」



電話の向こうの人との会話が、ちょこちょこ耳に入る。



悪いとは思うんだけど・・・。



「俺も急に欲しくなったんだ」



なんだか、雰囲気が柔らかで、仕事の話とは思えない。



ほんとに何と無くなんだけど、優斗さんなんじゃないかって、そう思ってしまう自分がいる。



あんな酷い言い方して、捜してくれるはずもないのに。



「くくっ。どうやらお姫様も、お気づきになられたようですよ?」




そう言って、受話器を戻した。



「もう誰だか分かったでしょ?」



「え・・・、ほんとに優斗さん?」



予想外に、自分の声が掠れている。



涙が出る、ちょっと前。



そんなあたしに対して、楽さんは、一気に吹き出した。



「あんな状況で電話してくるとか、さすがだよなッッ」



・・・やっぱり、優斗さんなんだっ!



安心からなのか、涙が出始めたあたしを、急に楽さんが引き寄せた。



急なことで、足がもたつき、そのまますっぽりと、楽さんの胸へ収まった。



・・・・はいっ?!



「ちょっ楽さんッッ!!!」



意外とがっしりした、その胸板を押すが、逆に更に引き寄せられる。