[完]大人の恋の始め方





通された最上階。



広々としていて、しかも立派。


ドラマとかに、よくオフィスとか出て来るけど、まさにそんな感じだ。



「こちらへどうぞ」



秘書の方にここまで連れてきて貰ってるんだけど、まぁ日本語が上手。



できた秘書さんだわぁ~。



・・・美人だし。



そんなことを思っていると、扉が開かれた。



「どうぞ」



頭を下げる秘書さんに、あたしも頭を下げ、中に入った。



「珍しいね。杏里ちゃんから寄ってくるなんて」



楽さんは、読んでいた書類を置き、眼鏡を外すと、こちらに寄ってきた。



スーツが凄く似合っている。



「別に・・・。それより、忙しかったんじゃ」



さっきの書類をちらっと見るけど、とっても分厚い。



「あぁ。別に平気だよ。杏里ちゃんが来てくれたしっ」



と、あたしに抱き着こうとした手を、あたしは抓り上げた。



「イテテテッッ!杏里ちゃん、乱暴はダメ!!」



ちょっと涙目の彼に対して、あたしはそっぽを向いた。



押し寄せちゃったのに、失礼だけど・・・なんかムカつく!!!



そんなあたしに、彼はしょうがないなって感じの笑みを見せ、ソファーに促した。



「もしかして、奈緒がなんか言った?」




「いえ。・・・奈緒さんは、過去のことを丁寧に話してくれました」



楽さんは、秘書さんからコーヒーを受け取り、あたしの前に出す。



それを受け取り、ひとつため息をついた。