[完]大人の恋の始め方





「・・・どうしてここに?」



多分、奈緒さんが切り上げたのは、優斗さんが見えたから、だよね?



「奈緒に呼ばれたんだよ。そろそろ話が終わるって」



「え?呼ばれたの?」



あれ?
じゃあ、優斗さんが見えたから、あんな話の区切り方したわけじゃないんだ。



じゃあ、なんで?
あたし、もっとお話ししたかったのに。



「お前に、昔のこと話したから、不安になっちゃうから迎えに来てあげてってな」



ホラ。と、携帯を出される。



そこには、確かに奈緒さんから、そんな内容のメールが届いていた。



「・・・そっか」



迎えに来てくれた事は凄く嬉しい。



でも、その反面。
まだ、優斗さんに対する不安が残っているのも事実だ。



だから、どんな顔をすればいいのか、分からなくなっていた。



そんなあたしに対して、別に何を言うわけでもなく、優斗さんは



あたしを優しく抱き寄せた。



フワッと香るのは、いつもの爽やかな香り。



あたしが、1番安心する貴方の香り。



優斗さんは、そのままあたしを、カフェの外へと誘導した。



そこには、タクシーが止めてあって、あたし達は、それに乗り込んだ。



行き先を、優斗さんがフランス語で伝えると、タクシーは動きだした。



聞こえた単語から考えるに、多分ホテルに戻るのだろう。