[完]大人の恋の始め方






だから優斗は、楽に含み笑いを見せた。



「あの女、やっと分かったみたいだな。俺の考えが」



このときの、優斗には、正直余裕なんか一つもなかった。



だが、余裕に見せるしかなかった。



あたかも自分の想定内かのように。



「どういう事だよ?」




楽は眉をしかめ、優斗を威嚇した。



頭に血が上っているときは、余裕の笑みが、やけに腹立つものだ。



「楽さぁ、知ってるか?あの女のカラダのこと」



「なんの話だ」



「まぁ、俺たち男にとっては、便利な話だけどな」



その言葉で、さらに眉をひそめる楽。



そんな楽の姿を見て、優斗はまだ楽が奈緒のカラダについて知らない事を、確信した。



本当は、奈緒の口から楽に伝えなければならない内容だ。


しかし、やむを得ないと優斗は判断した。



「俺が知ってるのにな。あの女さぁ、妊娠出来ないカラダなんだよ。
便利だよな~。いくらヤッても中出ししてもいいんだから。
まぁ、そう思ってることに、あの女もっ...」



その途中で、優斗に激痛が走った。



口内に広がる鉄の味。



優斗が起き上がろうとすると、さらに楽は馬乗りした。



楽の目に正気はない。



殴られ、意識も遠退く。



だが、これで奈緒に危害は行かないはずだ。