奈緒が居なくなったあと、二人に沈黙が走った。
楽は、自分がなにを言われたのか、全く分からずに怒りと、悔しさに覆われていた。
一方の優斗は、何故 奈緒があんな言動を起こしたのか、考えていた。
奈緒はもともと、自分の意見を率直に述べるタイプではない。
言葉が強くなるときは、誰かを守ろうとするとき。
それを優斗は分かっていた。
だからこそ、奈緒の言動には違和感を感じ、自分が彼女にさせてしまったのかもしれないと、考えたのだ。
「俺たちは、どっちもあの女に騙されてたわけか」
やっと言葉の意味を理解した楽が、怒りのうちをあらわにした。
頭に血が上り、冷静に物事を考えることの出来ない。
目は、今まで見たことのないくらい、強いどす黒いオーラを纏っている。
このとき、優斗は危機感を覚えた。
もし、このままの楽が大学へ行ったら、どうなるのだろう...?
奈緒に危害を加えるのではないか。
最低な女とか、悪い噂を立ててしまうのではないか。
そう思ったら、自分がなんとかしなくてはイケナイと、感じたのだ。
そのときには、なぜ奈緒があんな言動を起こしたのかも、想像がついた。
優斗に楽の怒りがぶつからないようにするためだ。
奈緒は優しいから、そう思っていなくても、勝手にそんな行動を取ったのかもしれない。
そう、優斗は想像していた。

