あたしは、胸が押し潰されそうになるのを必死で堪えた。
「最初はね、ただの臨時家庭教師だったの。
でもね、何回か勉強を教えているうちに、私たちは打ち解けてね。よく相談もしていたの」
「相談ですか?」
優斗さん、その頃悩み事いっぱいあったのかなぁ?
優斗さんって、あんまり相談しないタイプ何だけどな...。
「うん。私さ、子供が出来ない身体なの。
でも、楽は子供作りたいとか、早く結婚したいとか...
正直重いって感じちゃってたの」
あたしは目を見開いてしまった。
まさか、そんな辛い経験があるなんて、思わなくて...。
「あ、あの嫌なこと言わせてしまってませんか?」
ちょっとキョドりながら尋ねれば、奈緒さんは苦笑した。
「まぁ、今は大丈夫よ。あ、それでね、そのことを言ったらさ、優斗がね…………」
(杏里の想像)
「子供ができなくたって、奈緒さんは奈緒さんでしょ?
だから、ちゃんと子供が産めないこともちゃんと伝えなよ」
と微笑んだ優斗。
「あーあ。そんな優しい優斗くんが彼氏だったらな~」
と、奈緒は最初は冗談混じりで言っていた。
しかし、それはいつの間にか、本気になっていた。
愛は、いつ芽生えるか分からない。
「ねぇ...私、もっと優斗くんが知りたい」
「俺も今思ってた...」
優斗と奈緒は、軽い流れで、一線を超えてしまった。

