「あのさ、私、優斗と浮気関係だったの」
急にそんなこと言うものだから、あたしはタルトをお皿に落としてしまった。
「えっ?」
分かってる。
何と無くは分かってる。
でも、深く知りたい。
「私と優斗の話、聞きたそうな顔してたから、教えてあげる」
聞いても...いいよね?
辛くても、優斗さんの過去だもん。
ちゃんと分かってあげたいもん...。
「お話、聞かせて戴きたいです」
あたしの言葉ににこっと笑うと、奈緒さんは懐かしそうな表情になった。
「あれは...たしか私たちが22歳のときね。
私と楽は同じ大学で同じサークルに入っていたの。
歳が同じだから、話してたら気が合うことが分かってね。それで付き合い出して3年目だったの。
当時、楽は家庭教師のバイトをしててね。その子の話を良く聞いてたの。
その子は自分たちと同じヘアスタイリストに憧れてる高校1年生だって...。
凄く頭もいいし、ルックスもかなりいいって、自慢までして。
その話から、私は楽とその子が仲がよいのを察したの。
そんなある日、どうしても楽が外せない用事が出来たの。だから変わりに行ってくれって頼まれて...
私は初めて優斗と対面した。
ビックリしたわ。なんて容姿端麗なんだろうって。
まだ幼さは残るけど、十分すぎるルックスだった。」

