[完]大人の恋の始め方





「優斗さんっ!」



でも、抱き着くのも恥ずかしいし、迷惑かもしれない。



「ん?」



あたしの行動に疑問を持って首を傾げる優斗さん。



いけない!
あたしは大人な恋愛を教えて貰ってる最中だもんね。


こんなことで、グチグチ言っちゃダメだよね。



あたしは自分に言い聞かせると、優斗さんに笑顔を向けた。



「急に笑顔になった…。どうしたの?」



「ううんっ…。あ、楽さんはすぐ来るの?」



あたしは、なるべく触れられないように話を避けた。



それを優斗さんもふに落ちない様子であたしを見る。



だけど、だからってあたしの気持ちがバレて、ウザったい。って離れちゃうのも嫌だ。



「楽ならすぐ来るだろ。行動早い………」



言葉を遮り、室内にインターフォンが鳴る。



………こんなシチュエーションで来るのは、ただ一人。



楽さんだ。



優斗さんが鍵を開けると、予想通り楽さんが、中へ突入してきた。



「あ!杏里ちゃーんっ」



すぐに寄り付こうとする楽さんの襟を、優斗さんが素早く掴む。



「それ、俺の。触んな」



そのまま楽さんは、ズルズルと優斗さんの方へ引っ張られる。



「え、なに!?とうとう付き合い出しちゃったの?!」



優斗さんは、楽さんをシカトし、ドアに顔を向けた。