[完]大人の恋の始め方





「お前、またあいつらに何か言われたりしたら、ちゃんと言えよ?」



響くんは座っているあたしに手を伸ばす。



あたしは、その手を取りながら、彼を見た。



彼は、昔と変わらない目が無くなる可愛い笑顔で、あたしを見ている。



「ありがと。…、そういえば、友美はどうしただろうね?」



時計を見ると、とっくに1時間目は始まっていた。



朝から災難な思いをいた挙げ句、授業に間に合わないとは…。


「友美のことだから、どっかでサボってんじゃねーの?」



どうやら響くんは、授業を諦めたらしい。



教室の窓側に向かい、窓の外を眺めている。



「じゃあ、あたしもサボろうかなぁ…」



あたしは、響くんが何を見ているのかが気になって、隣で同じように窓の外を眺めた。



外では、1年生の男子がサッカーをやっている。



こんな暑いのに、よくもまああんなに走れるなぁ。



あたしなんて、今ここにいるだけで、欝すらと汗をかいているのに。




「……若いなぁ」



あたしがボソッと呟くと、隣の大きな身体が、ブルッと奮えた。



「おまっ…ばばあかよ!」



目は外を見たまま笑っている彼の横顔。



よく見ると、響くんはカッコイイのかもしれないなんて思った。



もちろん、不細工なんて思ったことはないが、別にカッコイイとか、そういう視点で見ては居なかった。