[完]大人の恋の始め方





「そっか。俺も…憧れるな」



響くんの目は、どこか遠い何かを見つめている。



響くんの目には、今なにが写っているの…?



首を傾げていると、彼はあたしの視線に気付き、クスリと笑って、あたしの隣に座った。



「俺さ、ある女の子の事、好きなんだよね」



「え…、友美じゃないんだよね?」



フッと困ったように笑いながら、「何度も言わせるな」と言われてしまう。



「その子さ、多分最近彼氏できたんだよ」



「うん」



「でさ、俺的には、俺に振り向いて欲しいわけじゃん?そこで大翔さんみたいに、カッコよく、あんな事言えるか?って考えたんだ」



響くんは、自分の未熟さを笑うような目をしている。



まるで第三者のようだ。



そうやって、客観視できる時点で、あたしは凄いと思うけどなー…。



「まぁ、考えた時点で、答えはNO。あんな爽やかに応援なんか出来ねえよ」



あ…。
響くん、本当にその子のことが好きなんだ…。



こんなにも顔を歪めて、苦しそうで…。



見ているこっちが、辛くなる。


「響くん、よっぽど好きなんだね。不謹慎だけど、あたしはそのこと話してくれて嬉しいよ」



「ははっ!本当に不謹慎だな」