[完]大人の恋の始め方






「先生…。あたしは、優斗さんが好きです。もう、あたしは先生の気持ちには答えられません。



…………ごめん……な…さい……」




涙がぼたぼた落ちて、スカートを濡らす。



今まであたしに嫌われてまで、あたしを守ってくれたんだね。



そう思ったら、涙が止まらない。



あたしは最低だ…。



「杏里、さんきゅ。俺が望んで、お前にあんな事言ったんだ。自分を責めんなよ?

響、今までバラさないで居てくれて、ありがとな」



先生は立ち上がり、響くんの肩に手を置くと、背中を叩いて、教室をあとにした。




先生の居なくなった教室は、一気に静まり返る。



その空間を破ったのは、あたしだった。



「響くん…、知ってたんだ」



座り込んだまま、あたしは響くんを見上げる。



「ああ。知ってたよ。」



響くんは、ポケットからティッシュを取り出し、あたしに渡す。



それを受け取ると、目のあたりを拭く。



うーわ…。
朝塗ったラインが落ちてるよ…。



「俺さぁ、今大翔さんが凄いカッコよく見えたわ」



確かにカッコ良かった。


顔とかじゃなくて、性格的に。


「そうだね…。なんか、真実を知った今、先生はやっぱりあたしの憧れだよ」