[完]大人の恋の始め方





「そういうとこが子供なんだよ」


見ると、そこには、不機嫌で眉毛を釣り上げている響くんの姿。



「響…アンタまで何しに来たの?」



「ほぉ…?お前の素はそれか。最悪だな」



響くんはそれだけ言うと、あたしを引っ張り抱き込む。



「ちょっ?!」


「ちょっと黙ってろ」



はい!?
黙ってろって、これ、あたし中心の話じゃなかったの?!



これじゃあ、主役がまったく出て来ない演劇と一緒だよ!?



「小林の方が、よっぽど人間的にも顔的にも格下だろ。そんな歪んだ心で、よくもまぁ、杏里をイロイロと言えたな」




アンタ、いつから居たんですか。



そんなこと、思ってる場合じゃないのは百も承知。


でも、やっぱりおかしい!



聞き出そうと顔を上げると、その顔をそのまま胸に押し付けられた。



あたし…、いる意味あるかな…?



「歪んだって…、響こそ最低!!」


「一人をリンチするお前の方がもっと最低」



響くん。
そんなに言い返すこともないのに…。



「とりあえず、もうこんな事はするなよ?次やったら、俺手加減しないぞ?」


先生はそう言うと、女の子達を教室の外へ追い出した。



最後に見えた春奈ちゃんの顔、見てられなかった。