[完]大人の恋の始め方





「あたし、そんなくだらない事に構ってるほど、暇じゃないのよ」



そう言い捨て、教室のドアを開ける。



すると、目の前に白のワイシャツと青いストライプのネクタイがあった。



上からため息が聞こえ、見上げた。




「大翔先生…」



あたしを少し退けると、中に入った。



「約束破ったんだな」



下を向いている春奈ちゃんの近くまで行く。



「………」



何も言葉を発さない春奈ちゃんに、冷たい視線を送る。



他の女の子達も、みんな下を向いて、顔を上げない。



「小林。俺は杏里が好きだ」



………っっ?!



あたしが大翔先生を見たのを余所に、ただ春奈ちゃんを見つめる。




「なんで?なんで、あたしじゃダメなわけ?顔だけじゃん!」



下を向いたままだから核心はないけど、多分涙目だ。



オドオドとしていると、先生はあたしの頭を撫でた。



ビックリして先生を見上げれば、どこか切なそうな表情をしていた。




「小林。大人になれ。」



先生の発言に、あたしは過剰反応した。



大人…か。



ねぇ先生。
どうしたら私たちは、大人になれますか…?



「大人って…先生の方がよっぽど子供じゃないッッ!好きな女一人に振り回されてさぁッッ」



その時、ドアから低い声が響いた。