[完]大人の恋の始め方





「杏里ちゃんって、可愛いよね」



「え?」



機械的な話し方ではない。



明らかに毒を含み、なんだか危ない匂いがする。



「その"顔"、ほんと羨ましいよ」



そう言って振り返った春奈ちゃんの顔は…



「もしかして…」



「そう。なんでアンタさ、あたしの事忘れてたわけ?アンタの大事な先生を奪った女なのに」



そうだ。


あの顔は、大翔先生の浮気相手だ…。



なんで今まで 、気付かなかったのかなぁ…?



「アンタってほんとずるいよねー。顔が可愛いからってモテるんだから」



やだっ…



「その顔がなけりゃ、ただのクズなのに。ねぇ?重い女さん?」




ニヤリと笑う、その唇に背筋が凍る。




「皆の大翔先生を取ったあとは、響を虜にしちゃってさぁ?挙げ句のはてには、モデルになってチヤホヤ。それでもって、優斗さんを見せつけ?」



「ちがっ…」



冷めたなんの感情もない、その瞳に、あたしは戸惑った。



こんな冷たい目を初めて見た。



「入ってきなよ」



その冷めた目でドアを見ると、何人かの女子が、中に入ってきた。



なに?!



「ウケるっ!驚いちゃってる~っ」



「ほんとだぁ~ッッ。可愛い可愛い顔が台なしだよぉ~?アハハ」