[完]大人の恋の始め方





振り返ると、そこには、クラスきっての清楚系女子、小林 春奈ちゃんがいた。



いつもの違うのは、色白の顔が赤くなっていること。



「どうしたの?」



あまり関わりのない春奈ちゃんに話しかけられたことに、驚きつつ、彼女をまじまじと見た。



制服はキチンと着こなしてるし、髪の毛は真っ暗ストレート。


ほんとに清楚だなぁ…。



「ちょっとお話があるんだけど」


ちょっと機械的な口調を直せば、パーフェクトで可愛いのに。



と思ってしまう。



春奈ちゃんを見ると、有無を言わせないくらいまっすぐな瞳に捕まり、あたしは着いていくことにした。



向かった先は、誰も通り掛からず、目立ちもしない空き教室。


入学して2年目だけど、この教室、初めて入った。



春奈ちゃんは、落ち着いた様子で、窓の方をジットリと見ている。



細すぎる足を組んで、堂々と立っている後ろ姿は、どこかで会った気がした。



どこだろう?と考えていると、凛とした声で、再び意識を春奈ちゃんに戻した。


「いきなり連れ出してゴメンね~」



「ううん、どうしたの?」



いつもの話し方と、ちょっと違う気がした。



刺があるような…。



「"どうしたの"か…」



目の前の春奈ちゃんは、何と無く黒いオーラで包まれている気がする。