[完]大人の恋の始め方






「ちょっと来てくんない?」



計くんは、そう口にすると、有無を言わさず手を引く。



「えっ…?」



友美も意味分からないといった顔で、計くんに引っ張られて行く。



二人が部屋を出ていくと、一気にざわめき出すクラス。



中には、友美をけなすような声も聞こえる。


しかも、さっきまで雑誌を持っていた女の子が…。



「何あれ」



響くんも目を見開いて、ドアを見つめている。



「だ…大丈夫かなぁ?」



なんか、凄い怒ってるような顔してたけど…。



「別に、変な事はしないだろ。計は友美のこと好きだし」



「えっ?!」



あたしの顎が外れそうになる。


そんなあたしを一瞥し、「はぁー」とため息を一つつく。



「やっぱり鈍感娘だな」



フッと馬鹿にしたような顔で言うから、あたしはポカッと響くんの太い腕を殴った。



でも否定しないだけ、マシでしょ?



「とうとう否定も出来なくなったか」



おいっ!



さっきからあたしのこと、馬鹿にし過ぎじゃない!?



「あのねぇ響く…」

「ねぇ、杏里ちゃん!」



あたしの声と重なって、ちょっと荒い女の子の声が聞こえる。