[完]大人の恋の始め方





くいっと顎を友美に向けながら、あたしを見下す。



「えー…なんかやだぁー」


女の子ってもんは面倒だ。


興味があるのに、干渉してはいけないと思うから、直接尋ねない。



だから、周りの噂を信じる。



「早く行けよー」



背中を押されるが、やっぱり…嫌だ。



「響くんが行けばイイじゃんっ」



あたしは響くんの後ろに回り込み、背中を押した。



「俺が聞いたらおかしいだろ…」



「なんで?」



押すのを止めて、響くんを見上げる。



すると、かなり言いにくそうな顔をする。



でも聞きたい。



だからあたしは、ジトジトと彼を見る。



すると、手の甲を口に当てて、少し顔を赤らめながら呟いた。



「友美の事好きだと思われるだろ…。おれ、あいつは恋愛対象じゃない…」



…………………え。



時が止まったかと思った。


耳がおかしくなったのかとも思った。



でもどうやら違うみたいで。



「嘘…だよね?」



「嘘じゃない」



チラッと友美を見ると、やっぱり少しげんなりとしていながらも、皆に囲まれている。



あたし、ずっと響くんは友美の事を好きだと思ってたのに。



再び視線を響くんに戻すと、複雑そうな表情を浮かべている。