[完]大人の恋の始め方





「何がズルいんだよ?」


なんか、さっきもこんな会話しなかったっけ?



「可愛いからズルいんだよー。」


ちょっとふざけた声を出しながら、あたしはパスタをフォークに絡める。



結局、おねだりされたら、あたしは勝てない。



この数時間の間に、あたしは最高に彼にハマったらしい。



「ふっ。それ、俺の台詞だけど?」



「え?」



眉を潜めれば、ニヤリと上がる口角が目に映った。



「俺的には、お前が可愛すぎてどうにかなりそうなわけ。俺を惚れさせるお前はズルい」



………………。



ななななななっ!?///



せっかく絡めたパスタも落としてしまう。



何、今の。


それこそズルくない?!



「あ、パスタ…」



そんなあたしの気なんて知らず。



パスタが落ちた事に対して、眉を潜める彼。



だって…、動揺するなって方が無理ッッ!!!



不意打ち過ぎるっ!



「杏里顔真っ赤…」



くくくっと笑う彼。


面白がってるな、コイツ。



あたしはムッとしながら、再びパスタを絡め取った。



そして、軽く深呼吸をすると、ゆっくりと優斗さんの口へと運んだ。



恥ずかしくて、死にそうだけど。



それでも、何と無く自分から、今日だけは"あーん"をしてあげたかった。