「杏里ちゃんは、きっといい恋が出来るわよ。だから、自信を持って?」
そう言われたとき、あたしの頬に一粒の涙が落ちた。
「あたしでも、恋は出来ますか…?」
ゆっくりと頷いたあと、あたしは優里花さんに抱きしめられた。
それが、凄く安心出来て。
あたしの中の線が、プチッと切れた気がした。
「辛かったよね。もう、自分の気持ち、押し殺さないで…」
あたしは優里花さんにしがみついたまま、号泣した。
やっと涙が止まったころには、すっかり身体が疲れてしまった。
「ぐすっ…優里花さん。ほんとごめんなさいっ」
綺麗なシャツに、あたしの涙が滲んでいる。
「大丈夫よ。それより、杏里ちゃんこそ大丈夫…?」
よっぽど酷い顔をしているのか、優里花さんは心配そうにあたしの顔を触った。
「大丈夫です…。ちょっとビックリですけど…」
すると、急に後ろから勢いよく抱き込まれた。
「遅かったじゃない…?」
優里花さんは、あたしより上に視線を向けている。
まさか…。
「っるせーよ。これでもかっ飛ばして来たんだから」
階段でも駆け上がってきたのか、やけに息が上がっている。