[完]大人の恋の始め方






「やっぱりまだ、杏里ちゃんは少し子供ね…」



その言葉に、シュンとしていると、優里花さんはふふっと笑った。



「何か勘違いしていない?」



「へ…?」



何をだろう…?
首を傾げると、優里花さんは目を細めた。



「誰も、子供がダメだなんて言ってないわよ?」


「でも…、」



あたしは、もう子供という歳でもない。



早く大人の考えが出来るように……。



「恋愛はね、ちょっと特殊なのよ。30、40歳になっても子供のような恋愛もする人もいるの。

だけど、それが決して悪いわけじゃない。
逆に大人の恋愛が必ずしも良いとも限らない。
大事なのは、相手を想う気持ちと、ほんのちょっとの我が儘」



目を丸くして優里花さんを見る。



「その反応、優斗と一緒。
私もね、母にこれ教えて貰ったの。
子供の恋愛を経験して、そこから少しずつ成長して。
相手を思いやれるようになって。

だけど、遠慮とは違う。自分をさらけ出せて、ほんの少し、我が儘が言える」



相手を思いやれる…。


あたしは自分の胸に手を当てた。



自分自身に聞くために。



あたしは優斗さんを、思いやれているのかどうか。



怖がらずに。