「杏里。俺のとこ戻って来いよ?」
と、顔が近付く。
この甘い顔に騙されちゃいけない。
あたしは、残っている力で精一杯首を振った。
「止めてくださいっ」
怖い怖い怖い
優斗さんっ………
あたしは無意識彼の名前を呼んでいた。
なんでだか分からない。
でも、頭に浮かんだ。
「やだっ!離してっ」
優斗さんを思った瞬間、腕に力が入る。
やっぱり、男の人には敵わない力だけど、明らかに強くなった力に大翔先生も驚いている。
「ったく。めんどくせぇ女。さっさと俺に尽くせよ」
そう言うと、あたしは後頭部を押さえ付けられ、さらに先生に近付いた。
マズイっ
このままだと……っ!!
近付く唇に涙が出た。
その時。
「!?!?」
大きな衝撃音と共に、倒れ込む大翔先生。
何が起きたのか分からず、ドアの方を見た。
そして、大量の涙が流れた。
勝手に身体が動き、抱き着いていた。

