[完]大人の恋の始め方






………ドクンッ



なんでこの人、それを引っ張り出すのだろうか。



そんなに、重いあたしが気に入らない?



早く…逃げたい。



「先生、罰は何すればいいんですか」



逃げたい一心で、あたしは用を急がす。




「どうやら、俺から逃げたいみたいだね」



図星をつかれ、思わず後ろに一歩下がった。




なんだろう?
嫌な予感がする。



「逃がさねーよ?」



あたしは、力ずくで引っ張られ、事もあろうに、先生に胸にダイブした。



「何…するんですか」



動揺を隠せない。



なんで抱きしめられてるの?



あたしは、力の限り胸板を押した。




だが、所詮女の力など、男にとってはなんてことない。



いくら押しても、ビクともしない。



「いやっ!離して下さいっ」



無我夢中で胸を叩く。



いやいやいや!



あたしは、昔の苦い経験がフラッシュバックしつつあった。




両足はガタガタと震え出し、握り拳には力がない。



恐怖が身体全体を渦巻いて、先生に対して、危険信号が点滅を始めた。



離れなきゃっ!



頭だけは妙に冷静で、必死に逃げようとしても、全て拒まれた。