[完]大人の恋の始め方






ちょっと緊張しつつも、メールボックスを開く。



「高杉さん、なんて?」



友美は、あたしの肩に頭を乗せて携帯を覗く。




「うん…。あ。今日仕事で帰り遅いって」



それを確認すると、「なーんだぁー」と、つまんなそうな顔をする友美。




だけど、何か思い付いたのか、急に不適な笑みを浮かべた。



「ねぇ杏里。」






…………………――――




あたしは、放課後体育教官室にいた。




「よく来たな」


「先生が呼んだんじゃないですか」



実は今朝の風紀検査で引っ掛かり、名前を書いたため、あたしは大翔先生に呼び出しされたのだ。



もちろん、最初は逃げようとも思ったし、友美にも止められた。



でも、どうせ捕まるのがオチだ。



なら、さっさとクリアしよう。



「そうピリピリするな。別に怒ってないから」



二人きりのこの部屋の中に、甘ったるい先生の声が響く。



「別に、先生が怒ってるとかそんなの、気にしてないです。あたしは早く帰りたいんです」



出来るだけ、なにもなかったように、機械的に彼に接する。



「随分と冷たいね。この1、2年でこんなにも変わるのかい?」