「鈍感の域越えてるだろ…」



呆れ顔の優斗さん。


ホントは分かったよ、意味。


だけど、どう返していいか分からなかったの。



「さて、何だかお腹空いたな。ランチでも食べて行くかい?」



ちょっと静かになった空気の中で、父が明るめの声で席を立つ。



その後に、「手伝うよ~」と、気が抜けるような声と共に、母が席を立つ。



あっという間に、あたし達3人になってしまった。



こうなれば、優斗さんと楽さんは本調子。



「さぁて、ご説明願おうか?」



自棄にドスの効いたその声に、身体が勝手に強張る。



「そーんな怖い顔すんなよ~!杏里ちゃんが怖がってんじゃ~ん」



ねぇ?と、頬杖を付いてあたしを見てくる楽さん。



それは、まるでマンガに出て来るように綺麗。



「そのキャラどうにかなんねーわけ?」



「ならないもーんっ!ついでに、杏里ちゃんは僕が貰うもーん!」



その直後、あたしを抱きしめる楽さん。



「やっ!」



いきなりの事で阻止する事も出来ず、すっぽりと楽さんの腕の中に埋まるあたし。



それを見て、ますます怒りに満ちる優斗さん。



「楽、悪ふざけはいい加減にしろっ」



そう言って、あたしを引っ張ろうとしたときだった。