「ところで楽さん。どこに向かってるの?」



男嫌いが、克服されたわけではないけど、余りにもスキンシップの多過ぎる楽さんに、慣れが生じていた。



「ん~?特に決めてないよぉ??」



決まってもないのに、あたしをあんなに無理矢理連れてきたの?



彼の行動力に驚きながらも、ただ街をブラブラと歩く。



と、その時。



「あれっ?もしかして杏里か?」



聞き覚えのある声が聞こえ、あたしは振り返った。



「やっぱり!どうしたんだ、こんなところでー!」




それは、皆さんご存知のあたしの馬鹿親父だった。




「なんでココにいるの!?」



馬鹿親父は、コックの格好であたし達に駆け寄る。



「なんでって、ここ俺の店の前だろ?」



ニコニコとしている馬鹿親父だけど、おかしいでしょ?!



フランスにいるなら連絡の1本くらいは入れろって話よ!



「どうしたの~?って杏里ちゃんじゃな~いっ★」


マヌケな母の声も聞こえる。



連絡の付かない二人と、まさかこんなアッサリと会うなんて…。



世界は狭いのか?



「杏里ちゃん、久しぶりィ~♪」


抱き着く母を、あたしは押し退ける。



「ちょっとおかしいでしょ!!連絡もしないで、こんな再会なんてっ!!」