「なんなんですか!!」



もう周りとか考えずに怒鳴る。



こっちが怒っているのを見て笑うとか、凄い不快だ。


しかも、朝からずっとこんなんだから、怒りもピークなわけだ。



こんな人に好かれるなんて、人生の汚点かもしれない。



「杏里ちゃんさ、それ無自覚?」



右口角をきゅっと上に上げて、あたしを見下ろす楽さん。



それは、ちょっと優斗さんにも似ていて……。



「なんの話ですか?」


ここで優斗さんを思い浮かべたのを、恥ずかしく思い、それを隠す為に、少し声のトーンが上がる。



「ありゃまーっ!ほんとに無自覚なんだね?」



一体、なんの話だろうか…?


ポカンと口を開けて、首を傾げれば、楽さんは顔を赤くした。


「顔、赤いですけど?」


「うるさいっ!杏里ちゃんのせいだよ」



真っ赤な顔で訳の分からない事を言う楽さん。



正直、初めて見る表情に内心では可愛く思った。



「なんで人のせいにするんですか!」



でも、あたしが楽さんを可愛く思ってるのがバレたくなくて、言葉が強くなる。



あたしが楽さんを見上げていると、両頬を強く潰された。



「んと、無自覚なのかよっ!男にウルウル上目遣いは、ダメだって習わなかったのか?」