譲る葉

「それで、話というのは?」

いらいらと机を叩きながら

椅子を揺らす上司。

「あの…」

口を開いたその瞬間まで迷っていた。

次の言葉を発するな

こんなこと駄目だ

考え直せ

頭の中で誰かの声がする。

胸が痛くて喋れない。

でも、ゴミを見るような上司の目つきに迫られて

今更何もないですとは言えなくて

私はついに、こう言ってしまった。


「母が…病気になって…家のことをしなければならないので…仕事…辞めさせてください」


言った瞬間、頭が真っ白になった。

もう、後戻りは出来ないのだ。