「ねぇ、天川さん。少し調子に乗り過ぎてない?」

「なんのことよ。もう帰りたいんだけど?」


一年生ももう1ヶ月で終わるくらいのことだった。
私は同級生と二年生の女子に呼ばれた。


「その態度がうざいのよ」

「気にとめなきゃいいでしょ。それに関わりがないんだから放っておいてよ」


群がって一方的に私が悪いように言いたかる彼女らが嫌いだった。
関わることが面倒で私は話をすべて聞き流していた。
黙っていればそのうち、向こうからいなくなってくれる。


「少しはなんとか言いなさいよ!」

「……なにか言って現状が変わるの?」


散々、言われた後に私は一人、取り残された。
他の女子生徒たちは帰って行ってしまった。
別にこれといった暴力もなにもなかった。
ただ、少しだけ心臓が痛いと思った。


「りおん。なにかあった?」

「なにも無い。かなちゃんは今日もピアノ?」

「……うん」

「そっか。私、先に帰るかな」

「りおん!無理しないでよ」

「わかってる。私が無理するわけないじゃん」


私が奏をかなちゃんって呼ぶなんて相当参っているらしい。
ため息をつきながらいつもの通学路を通って家に向かう。


「かなちゃんなんて何年ぶりに呼んだだろうか」

「3年ぶりだよ」

「か、奏!?どうしてここに?それに今日はピアノじゃ……」

「りおんの様子が変だから気になったんだ」

「……そっか。私は大丈夫。いつものことだから」

「また何か言われたの?」

「いいの。もう慣れてるから……だから、奏は気にしないでよね」