一歩、また一歩。


 もうすぐ4年も住んだことになるアパートを背に、夕暮れの道を歩く。

 りんと澄んだ風が、私にぶつかりながら流れていった。

 冬よりも少しだけ優しい風だ。


 4年前とは、色も長さも違う髪を緩やかになびかせる。

 あの頃は履いたこともなかった高いヒールを鳴らして、住宅街を抜けていく。

 息が上がって、自分がいつもよりも早いペースで歩んでいたことに気づく。

 誰も見てはいないのに気恥しくなって、歩調を緩めた。


 ショルダーバックのベルトをギュッと握って、大きく息を吐く。

 白い息はもう出なかった。

 見えない息を見送るように、空に視線を向ける。

 真っ赤に染まった空。

 明日は晴れだろうか。

 ツンと鼻の奥。

 キュッと喉が締まった。



 この住宅街が背負う夕日を見るのも、この道を進むのもあと少し。