高野先生の腕のなか




私は、神山くんを諦めきれていない。そう、今日自覚した。だから、その質問には、はい、と答えるべきである。


…の、だけど。


高野を思う。もし私が神山くんと付き合ったら、高野との関係は当然ながら終わってしまうだろう。


高野はただの数学教諭、私はただの数学係に戻り、二人でいることに特別な理由はなくなる。


ノートを取りに行って、抱きしめられることも。


高野が″俺″と言うことも。


私のことで喜怒哀楽することも。


全部、なくなるのだ。



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