「優木く…」
「俺、浮気でも構わないって思った。普通なら別れるのが当たり前だよな?けど、どうしてもアイツを離す事なんて出来ねぇんだよ…」
優木くんが言った、本音。
あたしにはどうする事も出来ない、大人の恋愛事情に頭がついていけなかった。
泣きそうな優木くんに何もしてあげれないのが、一番悔しい。
だけどそれより…
あたしは事務所を飛び出して、カウンターで一息ついていた店長の前で立ち止まる。
フツフツと湧いてくる何かが、あたしを止めようとはしてくれない。
郁人は店内のテーブルの席で注文を聞いている最中だったが、あたしが出てきた事に気付き、こちらを見ていた。
「…瑞樹ちゃん?」
どれだけ大人で美人な人でも、していい事と悪い事がある。
どれだけ大好きな人でも、許していい事とダメな事がある。

