心臓はもう動いていないはずなのに、ドクンと音を立てた気がした。
海羅も、目を見開き、言葉を失っているようだった。
そんな海羅の様子に気付いた海羅の母親はスッと辺りを見渡す。
「陸都(りくと)?ここに居るの?」
俺の知らないその名前を
海羅の母親は愛しそうに
涙をうっすら浮かべながら呼んでいた。
心臓が痛くて見ていられなかった。
そんな俺とは違って、
力強い瞳で、その小さな手で、海羅は母親の腕を掴む。
「ちがうよ、おにいちゃんじゃない」
陸都とは、海羅の話していた兄貴のことだった。
海羅は兄貴との約束をちゃんと守ろうとしているんだと、その小さな体を見てそう思った。
“海羅がお母さんを守ってあげてね”
“お母さんを頼んだよ”
息子を捜し、震える母親の腕をぎゅっと掴む海羅の姿を出来ればこいつの兄貴にも見せてやりたい。

