「私、最近失恋したんです。付き合ってたときは、別れたときこんなに沈むなんて思ってなかったのに…」

何も言わないで聞いてくれる。たまに遠くのほうを見つめながら。

「そっか…まぁ、そればっかりは仕方ないよな。」

励ましの言葉が欲しかったわけじゃないのに、言ってもらえないとなんだか少し寂しい。

「ってか、紗希ちゃんって１人で悩むタイプ？」

言われてみると私は確かに人に相談して同情されることが好きではない。
だから私はいつも相談される側だった。

「そうですね、あまり人に自分の悩みは言わないかも。」

やっぱり、と優矢さんは笑った。

「じゃあ、これからは俺が相談に乗るよ。１人で悩むのもいけなくはないけど、誰かに相談すると楽だしね。」

そう言ってケータイを出す優矢さん。

「アド交換しよ？あと、俺のことは優矢でいいよ。」

「は、はい。私も紗希で！」

呼び捨てはなんだか気恥ずかしかったけど、嬉しくも感じた。