涙でぐちゃぐちゃになったほのかの顔をそっとティッシュで拭いてやる間、ほのかは大人しくされるがままになっている。


「ん、これでよし、っと。」


「あの、あ、ありがとう…」


「どういたしまして。」


華奢なほのかを腕の中に包み込むと、きゅっと小さく丸まってほのかが俺の腕の中に収まった。


「わたしね、藤岡さんにも、酷いこと…。あのね、あの、っ」


「うん、ゆっくりでいいから。」


ほのかはこくんと小さく頷いた。そして意を決したようにすっと息を大きく吸った。


「わたし、怖い、の。」


「ん?何が怖い?」


「藤岡さんがすごくいいひとってことはよく分かったんだけど、その、今度からは真人さん、いない、から。」


最後の方は蚊の鳴くような小さな声になってしまったが、とりあえず不安の原因は分かった。どうやらずっと人と関わりを持たずに暮らしてきたほのかにとっては、いくら優しそうだとはいえ、いきなり他人とほのかだけで取り残されるのは不安なのだろう。


「そっか。俺が居ないところで藤岡さんといるのはまだ怖い?」


頷くほのか。


「じゃあ、俺と一緒なら大丈夫?」


またほのかは小さく頷いた。小さな手のひらはまた俺のセーターを握っている。


「じゃあ、俺の仕事が終わったら一緒に行こう。夜になっちゃうけど、藤岡さんに相談してみるから、な?」


ほのかはこくこくと何度も頷いた。