もうひとつ。


これはとても印象的で、
私の大事にしている記憶。


その日は、お祖母ちゃんのお葬式のため、
お母さんが実家へ一人で帰ってしまい、
お父さんは出張で家に帰ってこれない日だった。


私は早坂家に預けられて、
両親のことを恋しく思いながら夜を迎えた。


「...零くん?」


「うん?」


真っ暗な部屋が怖くて、
この部屋にいる唯一の人の名前を呼んだ。


「怖いよう...」


今にも泣きだしそうになる私を、
零くんが慰めてくれた。


「大丈夫、怖くないよ。」