case.MAKOTO


今日もまた、学生を補導する。

悩み、苦しむ彼らに俺はあのときのように手を貸してやる。


「もっとよく、回りを見てごらん。」


あの日、葵に言ったのと同じ言葉を彼らにも、投げ掛ける。


帰り道に、近所のスーパーへ寄ると、見知った顔がレジにいた。


あの子は確かこの前補導した子だ。


へぇ…頑張ってんだな。


あえて声はかけないでおこう。

邪魔しちゃ悪いから。


俺は彼女のいるレジの真後ろにあるレジへならんだ。


「ただいま。」


玄関の扉を開ける。


「お帰りなさい。」


「パパ〜。」


「おかえり。」


中へ入れば、幼い娘と息子が出迎えてくれる。


「ただいま。良い子にしてたか?」


「良い子だったよ。」


「偉いなぁ。」


「あなた、結婚式の招待状来てたわよ。横山明美さんって方から。」


横山?


[おまわり〜元気?この度私、七原明美は、結婚することになりました。]


明美か。


「誰?」


「前に話したことあったろ?」

「あぁ10年前に、亡くなった子のお友達?」

「そっ。」


あれから10年か。


あっという間だったな。