ten years ago〜10年後〜


case.AKEMI


「私どうしたら良いんですか」

そう言って、頭を抱える女の子に私は言った。


「ある女の子の話をしようか?」


前を向こうと誓いあってから、10年。


私は母校で、スクールカウンセラーとして働いている。

私のもとには連日、多くの患者が訪れる。


患者のほとんどが思春期真っ只中の生徒たち。


そんな彼らに私は決まって、葵の話をする。


11年前、愛する人を庇って、凶弾に倒れた親友の話を。


すると決まってみんな言うんだ。


「私もその人みたいになれるかな?」


この言葉が何より嬉しい。


「なれるよ。きっと。」


そう言って私は彼らを送り出す。


きっとなってね…。


葵のように…。


弱くても良い…。


脆くても良いから、純粋に、まっすぐ生きてね。


去って行く背中に、そう願いながら、