教室に入れば、やっぱりいた。

いつもの席に座るあいつは、毎日私に話しかけて来る。


他のやつらは避けるのに。


なぜあいつは毎日声をかけてくるんだろう。


「葵おはよう。」


馴れ馴れしく呼ばないで。


私はあんたと友達になった覚えはない。


その女は、独り言みたいにベラベラと喋り続ける。


名前はたしか…七原明美?


うざったい。


消えちゃえ。


私の心に入り込まないで。


扉をこじ開けないで。


人間なんか嫌いだ。


偽善者で、長いものに巻かれて、流されていきることしかできない。


大嫌いだ。


そんなやつ。


誰か教えてよ。


私、どうしたらいい?


屋上に逃げても、その女はついてきた。


「ハァ〜ハァ〜…葵はやいよ、追い付けない。」


お前を巻くために走ってんだよ。


追い付けないのは当たり前。


大体太りすぎなんだよ。


16歳でメタボは痛いぜ。


またしゃべんのかよ。


一人になりたい。


学校サボろう。


その前に始末しとくか、こいつ。


「お前さっきからうるせぇんだよ。うざがられてんのわかんないわけ?あんたなんか興味ないから。迷惑なんだけど。」


おっ怯んだ怯んだ。


あいつの声が私を追いかける。

「約束したじゃん。同じクラスになったら友達になろうって。葵は忘れてても私は、ちゃんと覚えてるから。思い出すまで待ってるから。」


約束?


そんなものに興味はない。


…約束…か…。