それから今の私が生まれた。


誰も信じない。


誰にも心を開かない。


ひとりぼっちの私が。


「葵だけはお兄ちゃんを許してあげて…私にとっては良いお兄ちゃんなの。きっと更正するはずだから。
それがあいつから来た最後のメール。」


シンと静まり返ったキッチンとは逆に、向かいの部屋から声が漏れる。


「写真の人だぁ。」


「ダメよ勝手に見たら。」


美紀と明美か。


「…話したのか?あの二人に」

「…話したのはお巡りがはじめてだ。」


「そうか。」


ボロボロのプリクラを見て、あいつらはどう思うだろう。


「何で和美は死ななきゃいけなかったの?被害者ならまだしも、何でなんの関係もない人間にまで、和美は否定されなきゃいけなかったんだよ。教えてよ幸せになる義務があるなら、何で和美は…」


気づくとお巡りに抱き締められていた。


「ごめん…俺には何も教えてやれない。お前がそこまで重いもの背負ってるなんて想像すらしてなかった。」


そりゃそうだよ。


「答えはこれから探していこう。協力することはできるからさ…」


誰かに涙を見せたのは、どれくらいぶりだろう。


和美の葬式の時ですら、涙は流さなかった。