「ねぇ」


前を歩く立花くんが、振り向かずに呼びかけてくる。



「何?」


「A子ちゃんの好きな人って、神谷だろ」


「えっ…」



突然の立花くんの話に、あたしは頭が着いていけていなかった。



「見てれば、わかるよ」


「見てればって…」



A子ちゃんがあたしだって、立花くんに言ってないのに…。



「ずっとA子ちゃんのこと見てたから」


「どっ、どういう意味?」


「俺…A子ちゃんが好きだから」


「えっ…」


「A子ちゃんが幸せになってくれればいいと思ってた…」



立花くんが振り返る。



その顔は冗談ではなくて、真剣な表情だった。