階段の下で、母が倒れている。


倒れているだけではなく、大量の血を流していた。
小さいながら私は頭の中で理解していた「こんなことをするのは父だけだ」

頭で理解できたと同時に自然に悲鳴をあげていた。


「キャァーーーーー!!」


私の悲鳴に気付いた父が、急いでリビングから出てきた。

血を流し動かない母を、父は冷えた目で見つめ

リビングへ戻った。

私は目の前で何がおきていたかあまり覚えてないが

もう1つ衝撃的だったことがある。

父はリビングから出てきた、と思ったそのとき。

右手には雑巾をもっていた。

壁や床に飛び散っている血を焦って吹き始めたのだ。

しかも救急車も呼んだ気配もなかった。

このままでは母が死んでしまう、と私は思ったが
幼稚園児の私は、あまりの衝撃で動けなかった。

父のズボンは血まみれだった。
怖かった・・・。


ボーッとしてた私は、やっと聞こえた救急車のサイレン音でハッとした。

このことは小さい頃のこと過ぎてこの後は覚えていない。


これは暴力の1つでしかない。

まだまだ悲惨なことは離婚した小学4年生のときまで続くのだ。


まさに地獄だった。


この事件・・・で、父は捕まらなかった。

母が父をかばったからだという、だが母は父を憎んでいた。

私は母が父に殴られてこのようなことになっていたことは知っていたが、


母は「ママが階段から足すべらして・・・だから心配いらないよ?」といった。


何もできない私の小さい心に罪悪感が広がった。