【音子side】

 私は、いつ数日前まで拒んでいたが光輝君との事件以来、慧の事が気になり始めていた。

「えぇー!?!? あの榎田慧と付き合う事にしたぁ~!?」

 友達とお弁当を食べてる時に大声で友達が叫んだ。

「ちょ、ちょっと…!! 声がデカい!!」

 そう私は、慧と正式に付き合う事になった。

 あの日、慧は私を試していた…。

 -昨日ー

 私は、下校時刻になると飛んでくる慧が来なかったから、ちょっと気になって慧の教室まで見に行った。

 そしたら、そこには慧と、ちょっと大人しめのギャルっぽい子が話していた。何を話してるかは分からなかったけど…はっきり聞こえたのは女の子の『好き』って言葉。

 やっぱり慧はモテるんだよね…。見た目めっちゃ怖いって感じだけど優しいとこ、いっぱいあるし…。
 でも慧は、いつでも私の事ばかり考えてるし女の子には悪いけど、きっと慧は告白を断ると思う。

 だけど私の聞いた言葉は予想もしていなかった慧の言葉だった。

「あぁ~…そう言ってくれて嬉しい」

 えっ!? な、何その返事…。まるで、この子の告白をOKしてるみたいな言い方。

「本当!?」

 ほら、女の子だって、こんな返事したら期待しちゃうじゃん!

「って事は榎田君彼女いないんだよね? あたしと付き合ってくれるんだよね!」
「まぁ…確かに彼女はいねぇ。落とそうとした女が、なかなか落ちねぇからお前に乗り換えるか…」

 …っ。そう…だよね。こんなにも、つれない女より、その子みたいな積極的で可愛くて自分の事好きだって言う子の方が良いよね…。
 折角…慧の事好きだって気付いたのに…もう…遅いよね。

 そう思ったら涙がボロボロと頬に伝わっていった。
 廊下を行きかう生徒達は私を変な目で見て行く。私は、そんな事も気にならないぐらい大粒の涙を流していた。

 慧…。私、好きだったの。もしかしたら拒んでいた時から好きだったのかもしれない…。『好き』って言わなくてごめんね…。

 その時ふわっと体が持ち上がった。ビックリして見たら…慧だった。
 何で慧がいるのか疑問と慧が来てくれた事が嬉しい気持ちが混乱していた。

 行きついた場所は屋上だった。
 私は涙で声が出なくて、なかなか慧にしゃべりかける事が出来なかった。
 慧も慧で黙っていた。

「うっ…ふぇ…け…い…」

 やっと微かに声が出た。

「ん?」

 いつもの慧なら『あ?』って言うのに今日は優しく答えてくれた。

「うっう…何…で、付き合って…ふぇ…あげなかっ…たの?」

 あたしは一番気になる事から聞いた。途切れ途切れの言葉に慧は、あっさり答えた。

「音子が好きだから」
「うっ…」
「俺は音子以外好きにはなんねぇよ」