「あぁ」
「って事は榎田君は彼女いないんだよね? あたしと付き合ってくれるんだよね!」
「まぁ…確かに彼女はいねぇ。落とそうとした女が、なかなか落ちねぇからお前に乗り換えるか…」

 俺は妖笑した。

「榎田君が落とそうとしても落ちないなんて…あたしにして正解だと思うよ!」
「あぁ…そうだな…」

 俺は女の肩に手を置いて顔を近づけた。そしたら女は素直に目を閉じた。
 しかし俺は肩に置いていた手を女の背中に回し俺の後ろへ投げ飛ばした。

「っ!! 榎田君!?」

 俺は女に顔を向けず淡々と話した。

「何がお前にして正解だ、不正解だ。確かに落としたい女は、なかなか落ちねぇし俺を好きかも分かんねぇよ。だけどな俺がアイツを好きなんだよ。悪かったな、虚仮にして」

 俺はドアの方へ、ゆっくり歩いた。
 俺の答えは正しかった。ドアの傍にうずくまって泣いているのは音子だった。そうあの時の音は音子が来た時の音だ。少しだったが音子の鞄に付けているキーホルダーが見えたから…。

 まだ俺に気付いてない音子を俺は持ち上げた。今ここで音子を抱きしめてもいいが、まだ教室には女がいるからな。

 音子はいきなり持ち上げられたからビビってる。だけど言葉は発しず泣いていた。
 俺は屋上まで行き音子を降ろしたが音子は、うずくまって泣き続けてた。
 俺は音子が話すまで黙ってる事にした。

「うっ…ふぇ…け…い…」
「ん?」
「うっう…何…で、付き合って…ふぇ…あげなかっ…たの?」
「音子が好きだから」
「うっ…」
「俺は音子以外好きにはなんねぇよ」

 俺は音子の頬に伝った涙を拭った。

 ギュッ。
 ふいに音子が俺に抱き付いた。

「っ!!」
「ふぇ…慧の…バカ」
「悪い…お前を試すような事して」
「ヒック…好き」
「はっ!?」

 今音子が『好き』って言ったか!? 抱き付いてきた事だけでも驚いてるのに。

「…慧がっ…好き」
「っ/////」

 チュッ。
 俺は堪らなくなってキスをした。音子は前みたいに拒まず受け止めてくれた。
 さっきまでの心の奥底の不安は消えていった。

「俺も好きだ音子。離さねぇかんな、覚悟しろよ」
「うんっ!」

 音子は俺に向けて満面の笑みを見せた。