雲のような彼の心を掴むために私は飛んだの。

雲の中にいれば私は触れていられる、貴方は私を見てくれた。

いくつかの季節を共に過ごして、やがて雲は形を変えて。

私の体は地上に下りた。

長い季節を一瞬に近い速さで思い出していたのだろう。

空を泳ぐ雲はまだ視界の中にいる。

形は変わっていくけど、穏やかに流れて進んでいくのだ。

気持ちいいくらい空は晴れていた。

そっと空に手を伸ばしてみても、もう雲を掴もうとはしない。

瞳の中、手の向こうを気にも止めずに雲は流れていく。

なぜか微笑んでいた。

「そっか。」

そう呟いた意味は自分でも分からない、でも出てきた言葉。

きっと私の中の素直な言葉。

彼と過ごした日々は記憶となっていく。

痛みも切なさも、すべてやさしい気持ちになって生まれ変わるようだった。

そんな感覚。